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若者のライフスタイルを大きく変えたスウェーデン少女

当時15歳のグレタ・トゥーンベリさんが世界に与えた影響とメッセージ。
科学に耳を傾けて、気候危機への対策に声を上げ、大きなムーブメントに。

ストックホルムのとある海辺を散歩していた時、見覚えのある人とすれ違った。その人はとても小柄で華奢で、着飾ることなく、自然体だった。そう、高校生環境活動家として有名になったスウェーデン人、グレタ・トゥーンベリさんだった。

彼女は学校で気候変動について知り、なぜこんなにも重要な問題に対策がなされていないのかと落ち込み、無気力になり、アスペルガー症候群や失言症に苦しんだ。彼女の凄いところは、そこで諦めず個人でできる行動を取ったこと。ビーガンになり、家族を説得してライフスタイルを変えて、ストックホルムの国会前でたった一人でストライキをした。当時、なんと15歳だった。科学の声に耳を傾けて温暖化対策として取り組むよう、政治家や企業など、大人たちに直ちに行動するよう求めた。彼女の影響力は著しく、世界中の学生たちが一斉に、気候危機に関してストライキやデモを始めた。


彼女に関しては色々な意見がある。彼女の影響力が大きくなるにつれて、反発する人や批判する人も出て来た。「パフォーマンスだ」とか「子どもならきちんと学校に行き、勉強して社会を変える力をつけろ」などと言う人も多かった。ドナルド・トランプ前アメリカ大統領とのTwitterのやりとりも話題になった。

グレタさんの活動の一部だけがメディアに取り上げられて、さまざまな憶測や批判が飛び交ったが、彼女のリアルに迫るドキュメンタリー『I Am Greta (2020)』や彼女の本が出るなどして、彼女の「行動力」だけではなく、彼女が「どこにでもいる15歳」であって、活動する上での「葛藤」や彼女の「多才さ」などにもスポットライトが当たるようになった。

スウェーデンでは暗記テストで高得点を取る教育より、自分で考えて意見を持つことが大切とされている。そしてノーベル賞授与式が毎年行われることでもイメージしやすいように、科学やデータの重要性を理解しているように感じる。そしてストックホルムは映画「魔女の宅急便」のモデルにもなったと言われる海の見える街ガムラスタンがあり、海や森など自然が豊かな街だ。これらの条件が揃ったこのストックホルムで生まれ育ったグレタさんが、学んで、意見を持ち、行動して、ムーブメントを起こしたというのは、たまたまではなく、気候危機のターニングポイントに世界がやっと気づき出したというタイミングと、彼女の才能と、スウェーデンで育ったという環境の3つが相まってそうさせたのかもしれない。

1990年代中盤~2000年代初頭生まれの世代を指す「Z世代」、そして、その次の2000年代中期から2020年代に生まれた世代「α世代」は「持つ」ことより「シェア」することを好み、競争に勝つことよりも自己実現や社会貢献への欲求が高い世代と言われている。これからの「消費の主役」となる世代の消費動向は、他の世代とは異なり、サブスクリプション、シェアリングエコノミーやエシカル消費など新しい消費の仕方や価値観を生み出してきた。

グレタさんもこの世代。その彼女に影響されてライフスタイルを変えた子たちもその世代。スウェーデンのセカンドハンドショップ(画像のようなリサイクルショップ)に行けば、多くの若者で溢れている。いわゆるビンテージものや古着好きな人だけが来ているわけではなく、色々なファッションスタイルの人がいる。最近のセカンドハンドショップは、おしゃれで、ディスプレイも綺麗で、手に取りたくなるような見せ方の仕掛けがふんだんに取り入れられている。ファストファッションをリードしてきたスウェーデン企業の一つ、H&Mもサステイナビリティーに注力して新しいビジネス戦略を進めている。そうしないともうすぐ「消費の主役」となるz世代のニーズを満たすことが出来ず、企業として生き残ることが出来なくなるからだろう。


以前、職場にインターンシッププログラムで来た若いスウェーデン人学生たちは皆揃いも揃ってビーガンだった。プラントベース(植物性のみ)の食事を提供するビーガン・ベジタリアンカフェやレストランも多くあるし、普通のレストランでも必ずと言って良いほどベジタリアンやビーガンの選択肢がある。温暖化対策として、CO2排出量の少ないベジタリアンやビーガンという食生活を選び、物に関しても新しく作られたものを買うのではなく、既にあるモノをシェアしたり、リユースしたりする生き方を好む若者が増えている傾向が、ストックホルムでは感じられる。

グレタさんや彼女に影響を受けたり賛同したりする学生たちは、私たちと同じ「普通」の人だが「知ること」から始まり「できることを考えて行動」をしてきた。自分が15歳だった時、ここまでの行動力があっただろうか。少なからず彼女の声が私にも届いた。自分がお金を使う時、その企業を応援したいのか、その企業の売上に貢献したいか、その企業は真摯に地球環境を考えて持続可能な社会を作ろうとしているのか、そんなことを考えるきっかけを、彼女はくれた。また今度すれ違ったら、声をかけて彼女の勇気と努力に対して、感謝の言葉を伝えたい。