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目から鱗!スウェーデンのフードロス対策アイディア

ゴミを活用したレストラン?生ゴミで走るバス?テックの力?
食品ロス対策は飛行機での移動を避けるよりも影響力がある。

友人に「COCOが好きそうなお店を見つけたんだけど一緒に行かない?」と誘われて行ったのは「Sop Köket」というレストラン。スウェーデン語で「Sop」はゴミ、「Köket」はキッチン。そう、そこは、スーパーマーケットなどから出る、規格外になったまだ食べられる”ゴミ”食品で、食事やケータリングを販売するお店。随分インパクトのあるレストランだなあという印象を受けながら食べに行ってみた。

「ゴミ」と言っても規格外なだけで、問題なく食べられるものがほとんど。例えばトマトのパックの中のひと粒は潰れているが、それを除けば他は問題なく食べられるようなものとか、しなしなになった人参とか、賞味期限がもうすぐ切れそうだが品質には問題ないような缶詰とか、スーパーマッケットなどの販売店では売れない商品だけど、上手に調理すれば美味しく食べられる食材などを使う。このお店はオーナーが「フードロス問題を解決したい」と考えて作ったレストランだった。食べに行った日のメニューは、ポテトスープに、ピリ辛パプリカソース添えの塩が効いた美味しいパン。どれもとても美味しくて、捨てられるはずった食品がこんなにも価値のあるものに変わるのか、シェフのスキルとレシピ、そして規格外とされる食品の可能性に驚いた。

「フードロス」とは「本来食べられるのに捨てられてしまう食品」のこと。日本語では「食品ロス」、英語では「Food Waste(フードウェイスト)」と言うこともある。食べ物を捨ててしまうのは、ただ単にもったいないだけではない。せっかくたくさんのエネルギーや水や資源を使って作った食品を、たくさんのエネルギー使って遠くまで運んだのに、誰の口にも入らずに全て無駄になってしまっているという非常に効率が悪い、悲しい現実がある。


世界のフードロスはグリーンガスエミッション(温室効果ガスの排出)の約6%を占めていて、それは飛行機で出るCO2排出の約6倍もあるというデータがある。以前は飛行機に乗って海外旅行に行くことが裕福であることの象徴で、SNSに飛行機に乗っている写真を載せることが流行った時代もあった。だが今のスウェーデンでは「 Flygskam(飛び恥)」と言う新しい言葉が辞書に載るほど、フライトに抵抗感がある人が多くなった。「自分の楽しみのためだけの旅行で飛行機に乗っているなんて(つまり環境問題を無視してCO2を大量に出しているなんて)恥ずかしいこと」と言う意味だ。
ただ、世界の民間航空機が2018年に排出したCO2は9億1800万トンだ。フードロスによる排出量がその約6倍もあると聞くと、飛行機をなるべく使わないという事も大事な事だが、いかにフードロス対策が大切か考えさせられる。

ちなみに日本ではどのくらいの「フードロス」があるかと言うと、毎年約600万トンの食べ物が、食べられるにもかかわらず捨てられてい ると推計されている。わかり易くすると、毎日国民全員がお茶碗一杯分捨てているのと同じ事になる。さらに、捨てられた食べ物を、ゴミとして処理するために燃料が使われ、 処理するための費用が税金から支払われる。まさに負の連鎖だ。

今スウェーデンのゴミ箱に捨てられるもののうち、約40%が生ゴミと言うデータがある。
それを何とか有効に使えないものかと考えて、ストックホルムでは生ゴミを分別してバイオガスにして使っている。つまり、家庭などから出る生ゴミを集めて、それをバイオエネルギーに変えて、市内のバスを走らせているのだ。茶色い紙袋が無料で配られて、そこに生ゴミを入れて、生ごみ専用のゴミ箱に入れる。
ただ課題もあって、現在のところストックホルムに住んでいる人が出す生ゴミの全体の約30%位しか、きちんと生ゴミとして分別されていない。これを2023年までに75%まであげて行くのが目標として掲げられている。最近ではレストランなどでも「生ゴミを分別すること」が義務とされて、生ゴミを可燃ゴミとして捨てずに、バイオエネルギーにしようという動きが更に強まっている。

他にもテクノロジー(以下:テック)の力で問題解決しようとする動きもある。必要な人と売りたい人をつなげるプラットフォームを提供するフードロス対策アプリだ。例えば、カフェやレストランなどが「今日食べてもらわないと明日には売れなくなる」と言う商品を、捨てるのではなく、割引して売れるサービス。レストラン側としては今までゴミとして捨てざるを得なかったものを、当日売れ残りが出たら安い値段だとしてもアプリに登録することで、売れる可能性が出る。消費者としては、当日にならないと売れ残りが出るかわからないが安い値段で購入できる可能性がある。

KarmaとToo Good To Goはヨーロッパや北米のアプリで、レストラン、カフェ、スーパーマーケット、お肉屋さん、コンビニなどで使える。位置情報をシェアするとアプリ上に地図が出てきて、近くのお店で余りそうなものがあれば表示してくれる。
私がよく使うのはパン屋さん。アプリを開いて夕方サプライズバッグを予約して、17時頃(閉店前)に取りにいく。そうするとカフェの店員さんが、「明日はもう売れないもの」を袋にぽんぽん入れてくれて、普通に買えば110kr(日本円で約1500円)とかするようなものを、35kr(約400円)くらいで売ってくれる。決済もアプリ上で簡単。もうすぐ賞味期限の切れるパンなどを貰ったとしても冷凍すれば、後々家でいつでも食べられるし、サラダなどはその日の晩御飯に追加したりする。仕事帰りに引き取る(購入する)予約を入れておくと、「今日は何がもらえるかな(買えるかな)」とちょっとワクワクする。


もちろん正規の値段で買うことがお店をサポートすることにはなる。でもゴミになってしまうものをその日に買い取れば、お店側も生ゴミとして廃棄せずに済むためwin-winとなる。日本で言うとスーパーのお値下げ品シールが貼られた状態のものが、アプリ上の地図で見えるような感覚かもしれない。日本にも似たサービスがないものかと思って探すと、TABETEやtabeloopなど幾つかのアプリを見つけた。テクノロジーでお店と消費者を繋ぐシステムを作り無駄に捨てる食品をなくす、素晴らしい取り組みだと思った。

あとは我が家の冷蔵庫で腐らせてしまう食品をいかに減らせるかなだあと思いながら、今日も冷蔵庫のドアを開ける。


〇参考資料
ストックホルム、ゴミ事情
https://www.stockholmvattenochavfall.se/matavfall/
世界データ、フードウェイスト
https://ourworldindata.org/food-waste-emissions
農林水産省ホームページ
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html
スウェーデンのリサイクル
https://sweden.se/climate/sustainability/recycling-and-beyond

〇関連YouTube Link
【SDGsって?】達成率1位の北欧スウェーデンの取り組みを考えてみた
【北欧Vlog】目指せゴミの少ない暮らし|ゼロウェイストショップと廃棄処分食材を使ったランチ