スウェーデンの夏の風物詩ザリガニパーティー
ザリガニ漁解禁の8月になるとスーパーマーケットに溢れるザリガニたち。
ザリガニの描かれた三角帽子を被って楽しくパーティー。
スウェーデンの夏の風物詩「kräftskiva(ザリガニ・パーティー)」。その名の通り、ハーブと塩で茹でたザリガニを食べながら、お酒を楽しみ、歌いながら家族や友人と盛り上がるザリガニパーティーは、スウェーデン人にとって大事な夏のイベントの一つ。天井には鮮やかな紙提灯を吊るして、ザリガニ柄の紙の帽子を被って、テーブルにはザリガニ柄の紙ナプキン、ザリガニ柄のコップやストロー、そして主役のザリガニがどどーんと並ぶ。初めてスウェーデンに来てザリガニパーティーに参加した時は、食べることにちょっと抵抗があった。日本人の私は小学校の頃、ザリガニをペットとして飼っていたから。
ザリガニパーティーの歴史は古く、16世紀には王族たちの間で流行したと言われている。17世紀には王族たち以外のスウェーデン人もザリガニを食べるようになったとか。
現在Kräftskiva(ザリガニパーティー)のシーズンは8月初旬に始まり、通常9月まで続く。それ以外の時期はザリガニ漁が禁止されているため、毎年解禁されるとお店がザリガニやパーティーの装飾で溢れかえる。ザリガニは多めの塩と砂糖で調理し、ディル(セリ科のハーブ)をたっぷり添えて、大皿に山盛りに盛る。真っ赤なザリガニをどどーんとテーブルの真ん中に置くと、一気に華やかになる。ザリガニが美味しいから食べていると言うよりも、昔からの風習を大切にして家族や友人が集まって楽しく食卓を囲うこと、そのためにやっているパーティーなのかなという感じ。
先日、北欧スウェーデンに住むYouTuber仲間がザリガニパーティーを企画してくれた。何度かザリガニパーティーに参加している私は喜んで参加した。味はというと、ロブスターとエビの中間という感じで、身はとてもジューシー。蟹味噌のようなザリガニ味噌も食べる。結構塩辛く味付けされているので、お酒がよく進む。「Snaps(シュナップス)」というアルコール度数30-40度ほどの蒸留酒を小さなグラスに入れて、飲み会で学生が歌っているような短い歌を歌いながら、「Skål!(スコール)」と言いながら乾杯して一気飲みするのがスウェーデン流。この飲み会の歌を歌ってお酒を飲む文化は、ザリガニパーティーだけではなくて、イースターやクリスマスなどイベントの食事会では、若者だけではなく、おじいちゃんおばあちゃんも元気に歌って参加する。義理の家族とのパーティーで義理の母父も75を過ぎているが楽しそうに大声で歌っていて、なんだかほっこりした。
最近のザリガニは輸入品が定番。スーパーマーケットにはスウェーデン産、トルコ産、中国産、スペイン産が並ぶ。価格は日本円で1kgで3千円〜1万円と値段に幅がある。一番人気はスウェーデン産のものだが、日本円で約1万〜1万3千円/kgと価格が高めなので輸入品を買う人は多い。人によっては、ザリガニを自分で採る人もいる。友人に聞いたところ、ザリガニは夜行性なので夜間に小魚を入れた網をセットして捕獲するらしい。「あんまり取れないけど、子どもが自然を学ぶっていう意味では良い思い出になると思う」と友人は言っていた。私はベジタリアンでもビーガンでもないが、気候危機を考えてCO2排出量を抑えるために動物性の食事は減らしている。でも、こういう人が集まってシーズンを楽しむ文化習慣は素敵だなと思うし、自分でザリガニを捕ってみることは子どもの食育に良いかもしれない。
参考リンク:
Experience a Swedish crayfish party