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街中でロイヤルファミリーのお忍びにも出会える!?

カフェにふらっと入ってきたのはまさかの次期王位継承者であるプリンセス。
配慮あるスウェーデン人たちがとった行動に感動。

スウェーデンに移住したての2012年頃、ストックホルムのとあるカフェで友人とフィーカをしていた時、見覚えのある女性が入ってきた。すらっと背が高く、カジュアルだけどきちんとした身なりだった。「あれ誰だっけ?見たことある顔だなあ。知り合いかなあ?」と、当時そこまでスウェーデン人の知人が多くなかった私はそんなことを思いながら彼女の方をぽけーっと見ていた。その時一緒にコーヒーを飲んでいたスウェーデン人の友人が「あれヴィクトリアだね!」と小声でこそっと教えてくれてやっと気がついた。「あああ!そうかロイヤルファミリーだから見覚えあるのか!」と思わず口から漏れた。

スウェーデンは王国なので王様がいる。その現王のカール16世グスタフの長女、ヴィクトリア皇太子がカジュアルな格好で、さらっと入ってきて、カフェのカウンターで何か注文している。その後、娘を抱っこした彼女の夫ダニエルが入ってきた。その後にはSPのような人が2人続けて入ってきた。
「普通」のカフェに、しかも通常の営業時間にさらっと入ってきたロイヤルファミリーにも驚いたが、それより何より私が驚いたのは、その場にいたスウェーデン人たちの反応だった。誰一人としてこっそり写真を撮ったり、握手を求めたり、騒いだりしなかった。あまりにも何の反応もしないお客さんたちを見て不思議に思い、友人に聞いた。「日本だったら有名人が入ってくるとすぐに写真撮ったりする人が出てくるんだけど、全然いないね!みんな気づいてないのかな?」と。すると友人は「プライベートだからじゃないかな?みんな気づいてると思うけど、多分今ヴィクトリアがここにいるのは、彼女のプライベート時間な訳だし、公務中ではないから、尊重してるのかもね。」と。すごい。凄すぎる。スウェーデンは超個人主義で他人に干渉せず、個人を大切にするとは聞いていたけれど、こういう民度が高いというか、その思想が相手の尊重することにも繋がるのかーと感動した。確かにスウェーデンにも当然ゴシップ雑誌やバラエティ番組はあるし、職場でも確かにゴシップ話や噂はある。でも多くの人がロイヤルファミリーに出会っても、彼らのプライベートを尊重して自分の行動を自制していた。そんな場面に出くわして、個人を尊重して他人に干渉しない感覚があまりにも新鮮だった。

そんなことがあって10年後、持続可能な開発目標(以下:SDGs)に興味を持っていくうちに、ヴィクトリア皇太子にも興味を持つようになった。彼女は次の王位継承者になる方で、科学に興味があり、気候危機などもたくさん勉強されているようで、SDGs関連のカンファレンスや研究記事、ニュースなどで彼女の名前をよく見るようになった。ヴィクトリア皇太子は2016年に国連の「アジェンダ2030のための持続可能な開発目標」のアボケート(応援・支援)メンバーに任命された。 つまり彼女はSDGsにおいて、アンバサダーとしてこのゴール達成を促進するのが役割になっている。スウェーデンのセカンドハンドストアが生んだアップサイクルブランドREmakeの服を公務で着こなしたり、国連のオーシャンカンファレンスでスピーチしたり、地球規模の持続可能性に関する分野で国際的に知られるスウェーデン出身の環境学者ヨハン・ロックストロームに話を聞いたりと、積極的に知識を取り入れたり啓蒙活動をしている。そんな女性が次の王位継承者であることが嬉しいし、素敵なロールモデルだなあと思う。と同時に、もしまた街中で彼女のプライベートに出くわすことがあったとしても、彼女の自由な時間と人としての権利を尊重して、声をかけないようにしようと心に誓った。