木のぬくもりが感じられる民芸品ダーラホース
長年スウェーデン人に愛されてきた木彫りの馬。
移住して初めてのアルバイトはそのダーラホースを扱うお土産屋さんだった。
スウェーデンに来て初めて働いたお店は、旧市街ガムラスタンにあるお土産屋さんだった。当時移住したてでスウェーデン語が話せなかった私は「英語と日本語でできる仕事、つまり観光客対応ならできる!」と思い、英語で書いた履歴書を大量に印刷して、お土産屋さんのドアを一軒一軒叩いて配って回った。そのうちの1件から連絡があり、「ちょうど今日本語のできる販売スタッフを探しているから面接に来て欲しい」と。そしてなんとか雇ってもらったのが、スウェーデンの民芸品「ダーラホース」のミュージアムを併設するお土産屋さんだった。
ダーラホース(「ダーラナホース」とも言う)は、スウェーデンの木彫りの馬の置物のこと。ダーラナ地方でたくさん作られたことが名前の由来になっていて、スウェーデン語ではDalahäst(ダーラヘスト)と言われる。18世紀の始め頃、木こりの人たちが仕事が終わった後に、遊び半分に作った木彫りの馬が始まりといわれていて、それ以降、長年スウェーデン人たちに愛されてきた。スウェーデンの冬は本当に日照時間が短いので、木こり達が仕事を早めに終えて、ストーブの前に座りながら、材木の切れ端で木彫りの馬をよく作ったようだ。元々は子どものおもちゃとして作られたダーラホースだが、今はお洒落なインテリアと捉えられていて、スウェーデン人の家にはかなりの確率でダーラホースがいる。
1939年にニューヨークで行われた万国博覧会で、スウェーデンのブースシンボルとして飾られたのが、高さ3メートルの巨大ダーラホース。そこから世界に知られるようになった。ダーラホースには特定の形があって、カラフルなのが一般的。王道はえんじ色のような赤をベースに、鞍(くら)などをイメージした模様をカラフルな色で描かれたもの。元々スウェーデンの家の塗装に使われていた、えんじ色のペンキの余りを使って塗っていたようで、赤が伝統的な色のようだ。全て手作りなので、5センチくらいの大きさのものでも、日本円で約3千円と結構いい値段。
アルバイト先だったお土産屋さん兼ダーラホースミュージアムでは、アンティーク好きなオーナーの趣味で、何十年も前のダーラホースがいくつも集められていた。100年前のものを見ると、ダーラホースがスウェーデン人に長く愛されてきたことを感じられた。
お店には販売用として、伝統的な柄のもの、モダンな柄のものなどいろいろなデザイン、種類、色、サイズのダーラホースが売られていた。日本人でも北欧好きな方がたくさん買いにきていたので、日本語でお話しするのが楽しかった。今はもうオーナーさんは変わってしまったようだが、移住したての私に仕事をさせてくれたこのダーラホースのお土産屋さんは、思い出深い場所である。
ダーラナホースとは?【北欧雑貨のアットテリア】
WOODEN HORSE MUSEUM SWEDEN