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北スウェーデンで大発見、国内は大盛り上がり

レアアースは風力発電や電気自動車などグリーンテクノロジーにも重要で、脱炭素社会を目指す上でも需要が増すと見られている。

ここ数週間スウェーデンを賑わせているニュースがある。それはスウェーデンの最北部でスマホ・携帯電話などの電子機器やミサイルにも使用されるレアアース(希土類)の鉱床が見つかったこと。ヨーロッパ最大規模とされ、ラジオでも、テレビでも、ニュースアプリでもスウェーデン国内はこの話題で持ちきりだ。

BBCニュースによると、ヨーロッパでは現在レアアースは採掘されておらず、欧州連合(EU)で2021年に使われたレアアースのうち、98%近くは中国から輸入されたものだったとのこと。しかも2010年以降中国が輸出枠を大幅削減したことから、価格が高騰。この輸入を一国に依存している状態を打開できることになる。そしてレアアースは今後需要が増すと見られているので、スウェーデン国にとってヨーロッパへ向けての大きなビジネスチャンスになる。特にこのレアアースは電気自動車や風力発電タービンの製造など、グリーンテクノロジーを推進し、脱炭素化を目指す企業にとって重要な元素。2030年までに世界の需要は現在の5倍に膨らむと予想されている。ただ採掘する際の環境への影響やリスクをきちんと考える必要があるため、採掘許可が降りるまで時間がかかり、実際に市場に出るまでには10−15年かかると言われている。

この大発見はスウェーデン北部キルナにある国営の鉱業会社LKABによるもの。この古くから鉄鋼の街として知られるキルナには、今回の発表により連日ジャーナリストやプレス関係者が訪れているので、観光をアピールするチャンスでもあると国は躍起になっている。朝、スウェーデンの国営放送ラジオを聞いていたら、レアアースを発見したLKABと政府がここぞとばかりにスウェーデン国の盛大なレアアースビジネスと観光のPRをしていて、まるで宝の山を掘り当てて大盛り上がりしている人たちみたいだなあと感じた。北スウェーデンの街キルナはもともと鉄鉱が採れるエリアとして栄えたが、鉄鋼を掘り進めるうちに地盤が沈下するという現象が起きて、それに対応するために街の一部を別の場所に移動させたりするくらい、スウェーデンでは重要な鉱業エリアだ。一方で、夏はハイキング客で賑わい、冬は氷でできたアイスホテルや犬ぞり、オーロラが見える場所として人気だ。私も夏に山登りに行く際にキルナに立ち寄ったことがある。小さな街だが、あの街がこれからさらにレアアースビジネスでも活気付いていくと思うと少しワクワクする。

報道によると今回発見されたのはレアアース100万トンほど。アメリカの試算では、レアアースの世界全体の埋蔵量は1億2000万トンとされる。なので、これに照らすと、スウェーデンでの発見はごくわずかだ。このレアアース100万トンでどれほどの電子機器が作れるのかが気になる。そして環境大国スウェーデンとしてはこの採掘で起きる環境への影響も、きちんと考えて進めていかなければならないので、議論すべき課題はたくさんあるだろう。でも少しの間この嬉しいニュースを噛み締めて喜んでもいいかもしれない。