1. TOP
  2. Köta Stories
  3. スウェーデン人の働き方からみるウェルビーイング

スウェーデン人の働き方からみるウェルビーイング

首相でも、教授でも、医者でも、社長でも、みんな下の名前で呼び合い、4週間連続の長期休みを取るように上司から勧められる国。

2022年にSustainable Development Solutions Networkから出された調査レポートによると、世界幸福度ランキングでスウェーデンは7位、日本は54位。それはなんでなんだろう。「ウェル・ビーイング」とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に全てにおいて満たされた状態にあることを意味する概念。スウェーデン企業で約7年ほど働いた経験と、ストックホルムに住んで感じることから考えてみた。こちらの職場で感じた日本との働き方の違いは3つある。「会社はフラットな組織であること」、「仕事だけが人生ではないと考えている人が多いこと」、そして「社会制度が充実し、求めすぎない文化がある」ということ。

「フラットな組織」というのを最初に感じたのは、お互いの呼び方。基本、下の名前(ファーストネーム)で呼び捨て、上司でも同僚でも「さん」付けにしたり、「社長」などの役職をつけて呼んだりはしない。首相でも、教授でも、先生でも、医者でも、みんな下の名前。お互いリスペクトしつつも、年齢や役職で判断せず、経験値や成果が重要視される。

フラットでオープンで意見が言いやすい環境が作られていて、会議ではどうしたいかを聞かれる。仕事をする上で、常に効率アップを求めているから、機能しないことがあればすぐにシステムや方法を変える傾向にある気がする。もちろん業種によるが、成果主義で、結果を出せばOK。求められている業務内容をしっかり行っていれば、時間に拘束されることもない職場だった。ミーティングも時間通りに初めて、時間通りに終わることを好む。残業は評価されない。就業時間が終わる17時には、みんないなくなる。特に金曜日は16時頃からいなくなる。特に夏は天気がいいからと、仕事を早く切り上げる人もいた。そしてフラットな組織を作る上でも役に立っているのが、フィーカ(コーヒーブレイク)の時間。フィーカが頻繁にあるので、スモールトークをして、簡単にプロジェクトの進捗を確認したり、プライベートの話をしたりして、コミュニケーションを取ることでスムーズに業務を遂行できるようにしている。

「仕事だけが人生ではないと考えている人が多い」ということを実感したのは、上司から「みなさん4週間ほどの夏休みを取ることを推奨しています」と春先にチーム全員にメールがきた時だった。基本的に有給休暇は5−6週間あるので、夏休みと冬休み、子どもがいる人は学校が休みになるスポーツウィークなどにまとめて取ることが多い。何週間も連続して長期休暇を取ることが推奨されているし、みんな権利として、なにも躊躇せずしっかり有給消化する。もちろん業種にもよるが、チーム全体で休むところもあれば、スケジュールを決めて代わりばんこに誰が休むか決めることもある。事前に他の部署やオフィスとも連携をとって、私のチームは7月はほぼ稼働していなかった。

「社会制度が充実し、求めすぎない文化がある」という点は、スウェーデンのジェンダーギャップ指数が小さいというのも、働き方に大きく関係していると思う。世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数のレポートによると、スウェーデンは毎年5位以内に入っていて、2022年も5位にランクインした。男女平等を目指しているスウェーデンでは、1980年から職場での性差別は「違法」としている。政治家、マネージメント、取締役会などでも、男女の割合は半々くらい。もちろん待機児童はいない。住む場所にもよるが、至る所に保育園がある。

実際にこちらで生活していて感じることは、子どものお迎えや料理、掃除は性別関係なくするということ。以前働いていたチームでは、男性上司や男性同僚も週に2−3回は、15時に退社して、子どものお迎えにいく。当時子どももおらず、毎日退社時間の17時まで残っていたのは私とインターンシップの子くらいだった。上司は早く帰る代わりに、夜仕事したり、朝早く来たりして、仕事をきちんと終わらせていたし、そもそも無理な締切やプロジェクトプランは立てていなかった。そんな上司や同僚を見ていたので、自分の家族と自分の人生を大切にして、仕事やキャリアだけに囚われない生き方ができることが実感できた。

家事育児も家族のことだから、性別は関係なく当然男性も女性もする。共働きだし、当たり前のこと。難しいなら外注することもできる。例えばハウスキーピング・クリーニングをお願いすると、半分ほど税金でカバーされる(免税対象になる)こともある。もちろん、どこの団体にお願いするかにもよるが、移民などの雇用確保のためにも、政府が推奨していたりする。家庭での料理のハードルも基本低い。何品も作る必要はなくて、一品料理だったり、冷凍品を利用したり、出来合いのものを買ってくる人も多い。日本ほど食へのこだわりが強い人が多いわけではないので、普段の食事はシンプルなもので満足できる人が多い気がする。

職場で感じることだけではなく、スーパーマーケットやレストランなどのお店でも、働き方を考えることがあった。忙しい時間帯(帰宅時など)以外に、スーパーマーケットにいくと、お店のスタッフさんが何台も大きな台車を持って商品を並べている。お店の開店前にするのではなく、営業時間内に、おしゃべりしながらゆっくり品出しする。お客さんも別にそれを当たり前だと思っていて、邪魔だとも思わないようだ。レストランでも営業終了時間が近くなるとお客さんがいても電気を消し初めて、まだ閉店まで20分くらいあっても、レジも閉める。お客さんの快適さや評価よりも「仕事の時間が終わるから帰る」ことを優先する。24時間営業のお店もほとんどない。「翌日お届け」のようなスピード重視のサービスも少ないし、何をするにも時間がかかるのが当たり前で「すぐに解決する」必要はないと社会から言われている気がする。特にお役所仕事などはケースにもよるが、何ヶ月も時間がかかったりすることもあるから、みんなの期待値が低い。便利な日本から来た人には、このライフスタイルに慣れるまで時間がかかると思う。でも、そのストレスの少なさがウェルビーイングに繋がっているのかもしれない。


World Happiness Report 2022
「先進国スウェーデンに学ぶ、ジェンダーギャップをなくす政策とは」サステナブル・ブランド ジャパン