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自然の中で過ごすスウェーデン流の休日の過ごし方

電車や車で少し郊外へ行けば大自然が広がる街、ストックホルムの人たちの自然との接し方

北海道出身の私は比較的自然に近い生活を送ってきたと思うけれど、それ以上にスウェーデンに住む人は、自然への思い入れが強く、自然との距離感がとても近い気がする。以前一緒に東京に住んでいた時の夫の口癖は「川に行きたい。森に行きたい。自然に触れたい。散歩したい。」だった。自然と触れていないとリラックスできないという感じだった。スウェーデン人は、外で運動をしたり、少し歩けばすぐにある森などに散策に出かけて新鮮な空気を吸ったりして、屋外で過ごすことがライフスタイルの一部になっている人が多い。

スウェーデンの大きさは日本とほぼ同じ。日本の1.2倍で少し大きいくらい。人口は日本の約1億2000万人に対してスウェーデンは約1000万人。首都のストックホルムの人口(約98万人、大都市圏では約224万人)も、日本の五大都市と比べて、そこまで多くはない。大都市から引っ越してきた人と話しているとストックホルムには娯楽が少ないという話題がたまに出てくる。確かに、東京やロンドン、ニューヨークと比べると街での娯楽の規模は小さい。でもスウェーデン人の遊び方、余暇の過ごし方は、街の娯楽だけではなく、森の中だったり、湖や海だったりする。自然との距離感が近く、そこで過ごすことを幸せだと感じる人が多い。

ストックホルム群島全体は2万4000ほどの島がある。首都のストックホルムであっても森や森林が比較的近場にあり、緑豊かで湖や海が見えることが多い。冬は湖が凍るので天然のアイススケートリンクができる。湖や海の近くには野外サウナがあることが多く、サウナで温まったあと冷たい湖の中に飛び込んだりもする。表面が凍っていてもお構いなしで、どんどん飛び込む。一度だけ体験したことがあるが、2度とやらないと心に誓ったほど寒かった。冬はたくさん着込んで例え氷点下の気温だったとしても夜の散歩に出掛ける人もいる。北スウェーデンに行けばアイスホテルや犬ぞり体験ができて、運が良ければオーロラ観察ができたりもする。条件がそろえばストックホルムでも年に何回かオーロラが見えることがある。

群島で成りたつストックホルムならではの夏の楽しみ方は、ボートに乗って島めぐりをしたり、ヨットやカヌー、キャンプやハイキングに出かけたり。平日仕事が終わったら友人や家族と待ち合わせをして、市内の岩場に座り、夜になってもなかなか沈まない太陽を眺めながら外でワインを飲む。休日には近くの森に行き、ハイキングをして、休憩には火を起こして持ってきたプラントベースのソーセージを焼く。こちらの森には日本のような休み所やレストラン、自販機があるわけではないが、自分達で持ってきたコーヒーや菓子パンでフィーカ(お茶休憩)をして、人の少ない自然を楽しむ。夏の終わりには森でブルーベリー摘み、秋はきのこ狩りをする。日本のいちご狩りのようなビニールハウスがあるわけではなく、誰でもどこでも無料で自由に摘むことができる。

そう、スウェーデンには「自然享受権」という珍しい権利があるから。スウェーデン語でAllemansratten(アッレマンスレッテン)といい、自然の中のどこで過ごしてもよいというもの。つまり、たとえ個人の所有地であっても、誰でも自由に森林や野原を通って、ベリー類やキノコを摘むことができる。原則として、自然保護のルールに従い、そこに住む動物や植物などの自然を傷つけたりしないことや、他の人に敬意を払って、そして邪魔をしない限り、どこでも散策することができる。だから私有地を区切る柵などはあまりみかけない。例えばどんな権利が認められているかというと、通行権(散歩したり、スキーやサイクリングをして通ることができる)、滞在権(テントなどで短期間寝泊まりできる権利)、果実採取権(野生のキノコやブルーベリーなどを採取できる)、自然環境利用権(カヌーやボート、釣りなどができる)。どこにでもテントを張って泊まっていいので、ハイキングしながら「この辺りは平地だし、湖もあるし、何泊かしようかな」と自分で決めていい。もちろん何泊もずーっと泊まり続けたり、地主に迷惑をかけたり、誰かの家の近くを選ぶようなことはルール違反。ゴミもちゃんと持って帰って、自然を汚さないように心がけるし、火を焚いたらきちんと後処理をして山火事にならないようにする責任がある。自然と共に生きているスウェーデン人にとって、これが誇りだし、幸せなことだと思っているようだ。

長期休みを使って少し長めに自然と触れ合う時間を取る人もいれば、毎日少しだけ森でランニングをしたり、散歩するように気軽にライフスタイルに組み込んでいる人もいる。これだけ自然との距離が近く、自然を生活の一部にしていると、気候危機で変わっていく山や海、気温や気候の変化にも当然気付きやすいし、地球を住み続けられる場所に保ちたいと当事者意識を持って考えるようになるのも、自然の流れなのかもしれないと思う。自然を大切にし、自然を楽しみ、自然と共に生きていくという意識の上で、選挙に行ったり、会社を選んだり、会社の指針を決めたり、ビジネスを始めたり、プラントベースの食べ物を積極的に取り入れたりするなどそれぞれできるアクションをする人たちが多いのにも納得できる気がする。

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The swedish Environmental Protection Agency: Allemansrätten